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【労働問題】外国人研修「労働者に該当せず」2中国人元実習生が敗訴/横浜地裁支部判決

 外国人研修・技能実習制度で来日し、川崎市幸区の建築工事請負会社で働いていた中国人の元技能実習生の男性2人が、研修期間中も実態は労働者として働かされていたなどとして、同社に労働契約に基づく賃金や損害賠償など計約1250万円を求めた訴訟の判決公判が18日、横浜地裁川崎支部であった。福島節男裁判長は「労働基準法上の労働者に該当するとの主張は認められない」として請求を棄却した。

 判決は、労働実態を示す証拠として提出された、2人が独自に記載した出勤簿について「信用性が著しく低い」と指摘。技能実習生になる条件である左官基礎2級に合格したことに言及し「技術を身に付ける作業を実際に行っていたことが推認され、研修を受けていなかったとは認めがたい」と判断した。判決などによると、中国・河北省出身の李書旺さん(34)と馮峰さん(29)は2005年3月に来日。3年間にわたり同社で働いていた。


 判決後、中国からインターネットを通じて質問に応じた馮さんは「証拠は十分あるのに、敗訴になって悔しい。控訴して高裁で闘っていきたい」とコメント。弁護団代表の指宿昭一弁護士は「判決は、国のガイドライン(休日研修禁止)に抵触する事実があったことを認定しながら、違反かどうかの判断には何ら言及しない不当判決」と話し、近日中に控訴する方針を固めた。

     ◇ ◆ ◇

 研修か労働か―。創設以来、問題を指摘されてきた外国人研修・技能実習制度。今回の判決は、研修と労働の境目のあいまいさをあらためて浮き彫りにした。

 全国の弁護士約110人でつくる「外国人研修生問題弁護士連絡会」によると、制度をめぐる裁判で判決が出たのは計7件。労働性が認められなかったのは川崎のケースが初めてだ。

 法務省入国管理局が示したガイドラインなどで研修は1週40時間基準とされ、時間外や休日は許されていない。また、原則として日本語教育など座学による非実務研修は、全体の3分の1以上は実施しなければならない。

 しかし、労働法などに詳しい立命館大学法学部の吉田美喜夫教授は「実態は外から見えにくく、判断は難しい」と指摘する。今回、2人が左官基礎2級に合格したことを研修実態を認める大きな理由に掲げた裁判所の判決について「単純な判断という印象が強い」と言う。

 「研修は時間の長さだけでなく、内容を詳しく見る必要がある。研修期間と技能実習期間の内容に変化があったかなど、丁寧に精査しないと、研修の実が備わっていたかどうか認定できない。裁判所はもっと奥まで踏み込み実態を見る必要がある」と話す。現在、制度をめぐる裁判は全国で20件が係争中だ。

 中国に帰国し、日本で研修を受けた建築関係とは全く違う職に就く馮さんは、「日本の先進技術は身につかなかった。結局、仕事も技能も、お金も何も得られなかった」と振り返った。

◆外国人研修・技能実習制度 発展途上国への技術移転と人材育成を掲げ1993年に創設。1年間の研修期間を経て、労働関係法令が適用される2年間の技能実習期間に移る。研修生が過酷な労働を強いられたとする訴えが全国で相次いだことから、7月施行の改正入管法では、1年目から技能実習生として労働関係法令が適用されることになった。国際研修協力機構によると、同機構が支援する2008年の研修生は全国で6万8150人、県内は1601人。技能実習生まで含めると全国で20万人ともいわれる。

2010年5月19日 カナロコ
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1005190011/

 
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