海外で家政婦として働くインドネシア人女性が、雇用主などから性的虐待や暴力を受ける問題が深刻化している。政府の調査によると、昨年1年間に確認された性的虐待は1500件を超え、妊娠したケースは約380件に上る。世界有数の「出稼ぎ大国」として知られるインドネシアだが、被害者の証言からは悲 惨な実態が浮き彫りになった。【ジャカルタ佐藤賢二郎】
◇過酷な労働、給与未払いも
「私は汚れてしまった。それをとても恥じています」。クウェートで家政婦として働いていたイエニーさん(25)は、ジャカルタ市内で重い口を開いた。昨年10月、いつもより早く帰宅した雇い主のエジプト人男性にレイプされた。「必死に抵抗したけど、力が強くて逃げられなかった」
イエニーさんは大学に進み、生物の教師を目指したが、20歳の時に経済的理由から中退。シンガポールで約2年間、家政婦として働き、帰国して国内で仕事を探したが、大学中退のため定職に就けなかった。「屋台で料理を売り歩く老いた父に食堂を持たせ、大学に戻って勉強を続けたかった」というイエニーさんは昨年2月、再度の出稼ぎでクウェートに向かった。
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